For You 〜 天使だった君に 最高のお返しを


幸せだ、幸せ……とても幸せなはずなのに何故か胸が苦しくなった。

目頭がぐっと熱くなって、鼻の奥がツンと痛くなった。


何でだろう、幸せすぎるのだろうか、幸せすぎて涙が出てしまうのだろうか。



いつから握っていたのだろう、私の左手には彼のスマホが握られている。


そうだ、私は「For You」の歌詞を探すために彼のスマホのメモを見ていたんだ。

それで辛くなってそのままベッドに横たわっていた……



ああこれは夢だ。

彼は亡くなった。

これはいつもの夢なんだ。


そう気付くと、納得して涙を流すことが出来た。


恋しくて恋しくてたまらなかった彼の温もり。

これは私の記憶の中のものなのだろうけれど、それでも確かに温かくて酷く心地が良い。


「会いたかった……」


ほとんど声にもならない声で呟くと、彼はふっと息を漏らして笑って私を一層強く抱きしめてくれた。


「勝手にメモ見てごめん」


すると彼は、今度は声をははっと出して笑った。


「いいよ、優梨花になら見られてもいい」


私は身勝手だ。


夢の中の彼は私の想像な訳で、その彼はいつだって私に都合の良い返事をくれる。

彼が本当にそう思っているかも分からないのに、彼の口から聞くことであたかも彼の気持ちかのように思って、それで自分を正当化するのだ。


それでも私はそれに頼らずにはいられない。