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目を覚ますと窓の外は仄明るかった。
時計を確認すると5時少し過ぎたところで、もうすぐ日の出の時刻だろう。
背中に感じる心地良い温もり。
とてつもなく落ち着く温度に身を委ねて、もう一度目を瞑る。
心いっぱいの幸せ。
私はこの瞬間がたぶん何よりもいちばん好きだ。
でもどうしてか、ずっと一緒にいるはずなのに、随分その温もりを恋しく思っていた様な不思議な感覚になった。
包まれた彼の腕の中で、後ろを振り返る。
そこには愛しくてたまらない彼の姿。
忙しくても週に1回は会うようにしているはずなのに、何故か今日は彼にすがりつきたくて、今より一層身体を寄せた。
彼の首筋に顔を埋めて、胸いっぱいに彼の匂いを吸い込んだ。
胸の中に彼の匂いが染み渡っていく。
うん、ちゃんと彼がここにいる。
「……んん、どうした?優梨花」
どうやら起こしてしまったらしい。
微睡みの中で話す彼の声は甘えん坊な猫みたいで、いつもの凛々しさが剥がれている。
そんな彼に愛しさが一層溢れた。
「瞬一にもっと引っ付きたくなったの」
彼はほとんど開いていない目のまま、微笑む。
「んーいつもより甘えん坊だな、おいで」
私を包んでいた腕を広げて、近付く隙間を作ってくれた。
その隙間が全部なくなるくらいに彼に身を寄せる。
するとそれと同じくらいの力で、彼も私を抱きしめる腕に力を込めてくれた。

