For You 〜 天使だった君に 最高のお返しを


          *


目を覚ますと窓の外は仄明るかった。

時計を確認すると5時少し過ぎたところで、もうすぐ日の出の時刻だろう。


背中に感じる心地良い温もり。

とてつもなく落ち着く温度に身を委ねて、もう一度目を瞑る。


心いっぱいの幸せ。

私はこの瞬間がたぶん何よりもいちばん好きだ。


でもどうしてか、ずっと一緒にいるはずなのに、随分その温もりを恋しく思っていた様な不思議な感覚になった。


包まれた彼の腕の中で、後ろを振り返る。

そこには愛しくてたまらない彼の姿。


忙しくても週に1回は会うようにしているはずなのに、何故か今日は彼にすがりつきたくて、今より一層身体を寄せた。


彼の首筋に顔を埋めて、胸いっぱいに彼の匂いを吸い込んだ。

胸の中に彼の匂いが染み渡っていく。

うん、ちゃんと彼がここにいる。


「……んん、どうした?優梨花」


どうやら起こしてしまったらしい。


微睡みの中で話す彼の声は甘えん坊な猫みたいで、いつもの凛々しさが剥がれている。

そんな彼に愛しさが一層溢れた。


「瞬一にもっと引っ付きたくなったの」


彼はほとんど開いていない目のまま、微笑む。


「んーいつもより甘えん坊だな、おいで」


私を包んでいた腕を広げて、近付く隙間を作ってくれた。


その隙間が全部なくなるくらいに彼に身を寄せる。

するとそれと同じくらいの力で、彼も私を抱きしめる腕に力を込めてくれた。