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スクロールしきったところの最後の行にはそのように記されていた。
つまり決まっていないままか、または決まってはいたけど書き記していないのか。
彼は最期の最後まで考えに考え抜いたのに、歌詞を決められなかったかもしれないのだ。
もしそうだとしたら、どれほど未練が残っているだろう。
私じゃ推し量り切れない。
胸が切り刻まれたように痛くて、痛すぎて、このまま死んでしまえるのではないかとさえ思えた。
どちらにせよ、彼にそれを確認する術は、もう、無いのだ。
彼は自分の余命を知って、私に伝えたいことを録音という形で残していた。
死ぬのは自分なのに、死の恐怖なんてとっくの昔に乗り越えていた。
私はといえば、病気が発覚してからの3ヶ月間、彼が死ぬという事実を受け入れないことで、それを希望とした。
そうしていないととても平常心を保っていられそうになかったからだ。
彼がもし死んだら、なんていう仮定すらしないことが、彼を信じることだと信じていた。
それがなんと愚かだったことか。
スマホのメモに収まった私の大好きなたくさんの言葉の欠片たちはもう永遠に輝きをもらえないし、私の中に蓄積された想いも永遠に彼の耳には届かない。
どうして私はこんな簡単なことにも気付けなかった……

