私の険しい気配を察してか、住友さんがいつもの優しい声でフォローをしてくれる。
「優梨花さんにご承諾頂けるなら、僕らの方で確認させて頂くという形もあります」
楠木さんも頷く。
彼はいい人たちに囲まれた素敵な環境に居れたんだとふと思い、場違いにもホッとした。
正直そうしてくれた方がありがたい。
辛いことから目を背けられる。
楽な方に流されそうになったときに、頭の中に矢が刺さるように彼の言葉を思い出した。
For Youの歌詞が決まったら優梨花にいちばんに伝える
頭を抱えて必死に考える彼はそう言って、だから期待してて、とも付け加えた。
もしそこの歌詞が決まっていたとしたら、彼との約束を守るためにも私がいちばんにスマホを確認しなければならない。
それに彼以外誰も知らないこと知る機会を、みすみす手放すのも悔しい気もする。
下唇を噛んで、腹をぎゅっと括りつけた。
「いえ、私が確認します。
……瞬一と約束したので」
何を、とはふたりとも聞かなかった。
その代わり楠木さんはふわりと表情を柔らかくして、住友さんはふっと息を漏らして微笑んだ。
その表情を見てまた思う。
ああ本当に良かった、彼は生前幸せに音楽活動を出来ていたはずだ。
私が帰宅次第彼のスマホを確認し、可能性のあるものは全て住友さんと楠木さんに転送するということで話が落ち着いた。
音源が不完全なままリリースするかどうかは、とりあえず歌詞を探してから考えるということになった。

