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それから数日後、私はレコード会社へ向かった。


事務所とレコード会社を分けて考えたことは無かったが、どうやらレコード会社というのは事務所の子会社にあたり、組織としてはそれぞれ独立しているらしかった。


住友さんとレコード会社のビルの前で待ち合わせをして、ビル内の会議室でレコード会社側の人と3人で話した。


レコード会社の方は、楠木さんという方だった。

癒しを与えるような話し方の住友さんとは真逆の雰囲気の人で、必要なことを的確に少し早口に話す人だ。

ずっと理系社会で生きてきた優梨花にとって、楠木さんの方が馴染みのあるタイプだった。


基本的には、契約の内容などを楠木さんから私が説明を受ける形で、所々分かりにくいところは、住友さんに噛み砕いて説明してもらった。


大方の説明を聞いた後に、楠木さんが伝えておかなければならないことが、と前置きをして続ける。


「実は最後の曲、このアルバムのリード曲でもある『For You』の録音が終わっていません」


ミニアルバムのリード曲はアルバムと同タイトルで 『For You』だった。

彼がいつも支えてくれる人への感謝を歌った曲で、アルバムの中でこの曲だけ唯一新しく書き下ろしたものだ。