『優梨花はすごい!』


突然覇気のある語調で彼が私を褒める。

彼は昔から、言われているこちらがギブアップしたくなるくらい、ストレートな言葉で他人を褒めるのが上手だった。


『優梨花はすーごいんだぞー!』


ストレートに褒めてくれるにしても、変なスイッチが入っている。

いつもこんな風におどけることが多かったから、思わず笑いが漏れた。


知ってた?分かってた?


そう言いながら浮かべる彼のいたずらな笑顔が、容易に想像できる。


はははっ、彼は大きく声に出して笑った後、すっと落ち着いた空気を出した。


『そんなすごい優梨花は、天気のいい日には出かけた方がいいぞー!』


ああ、

すっと納得がいった。


彼が伝えたかったのは、これだ。


真面目なことを言う直前に、照れてよくふざけてしまう人だった。


『出不精な優梨花のことだから、俺が居なくなったら引きこもりになってそうだなぁ』


当たっている。

彼のお葬式から、昨日まで一歩も家の外に出ていなかった。


基本的に横着な性格の私は、日頃から何も予定がない日に家を出ることは滅多になかった。

食材の買い出しに行くことすらしたくないため、前日のうちに買い込んでおくのだ。