『優梨花はそういうさー運がいいっていうか、世渡り上手なところがあるよなー』


自分で全く自覚はないのだが、彼に何度か言われたことがあった。

私からしてみると、コミュニケーション能力が高くて、みんなと仲良くできる彼の方が、世間を上手く渡り歩いていけると思う。

現に彼は、その能力で得た人脈で、ライブやイベントに呼んでもらえたりすることが多かったのだ。


『テストのヤマとか、優梨花の言ったところ絶対出るし。

オレンジの人に出逢えたのだって優梨花のお陰だった』


オレンジとは彼がインディーズ時代に所属していた「オレンジレコーズ」のことだ。


私の大学の先輩がオレンジレコーズに勤めていて、そのツテで彼の音源を渡すことが出来たのだ。

そうして彼は、大学4年生の時にインディーズデビューをすることになった。


彼の実力だと、レコード会社が目をつけるのは時間の問題だっただろうけれど、私にツテがあったことで、それまでの時間が早まったのは事実だった。