For You 〜 天使だった君に 最高のお返しを

『今日はね、今まで言ってなかったでしょ?

優梨花のことを好きになったきっかけについて話したいと思います。


今まで聞かれても絶対言わなかったしな。

面と向かってとか、恥ずかしいし。


何となく、想像はついてるかもしれないけど……何度目だったかな?

優梨花が俺のライブに来てくれたとき、俺の歌詞を聴いただけで、俺が養子なこと言い当てたよね?


あれはホントにびっくりした。

なんか、調べられてるのかとも思った。


けど、優梨花言ったよな?

「違う感じがした」って。


これまたびっくりしたよ。

「感じ」だけで言い当てられちゃったんだから。

あの頃でも一応少数ながら俺にもファンがいたけど、そんなこと言った人はいなかった。


それでね、生意気だと思うだろうけど、もうこの人しかいないって思ったんだ、その時。

この人の感性が大好きだと思った。


言っちゃえば、前から少し惹かれてはいたよ。

でもあの瞬間で一気に惹かれたんだよ。


あぁー。照れるわー、これ。

ダメだよ、ホントに』


あの時――

今でも何がどう転がったのか全く分からなかったんだ。


付き合い始めてから、養子であることは聞いたけど、いくら言い当てられたからといっても、脈絡がなさすぎた。


あの時のあの発言は、後で何度も後悔したんだ。


自分も似たような身だ。

自分がもし言われた方の立場だったらさらっと聞き流せないくらいには心に引っ掛かるだろう。


別に里子であることをコンプレックスに思ってはいないから、実際傷ついたりするわけではない。

けれど敏感なことだし、聞かれた側がどう思うのかを考えない所に何を無神経な……と思う。


自分が傷つかないが故に、あまり深く考えずに質問してしまったのだ。


でも、もしあの発言がなくてあなたが好きだと言ってくれなかったのだとしたら、あの発言はいいことだったのかな。


こうしてあなたはまた私を許して楽にしてくれる。