曖昧な、人気者



自然と自分の口元が緩むのが分かる。


ちらりと後ろを見れば、案の定、あいつがこちらを睨んでいる。


眼鏡とマスクをしているから、周りには気づかれていないが、……あれはなかなかキレているな。





このままでいるのも面白いけれど、興味ない女に手を掴まれ続けるのは鬱陶しい。

だから、離してもらおうと、


「弥生?」

「ん?晴、どうした?」

「鞄から取り出したい物あるから、離して?」


微笑みを浮かべたままそう言うが、


「あたしが取ってあげるよ。どれ?」


自分を気がきくとでも思っていそうな顔で、そう返された。