曖昧な、人気者




「……俺に何か言うことは?」

「特に何も」


「……ふーん。そう」


椅子を立つ音がして、こちらに段々と足音が近づいて来る。

これもまた今までの経験からか、自然と鞄を胸の前で構えてしまう。


そんな私の行動に表情1つ変えずに、目の前の人物は背後の扉に左手をつき、右手で私の顔を無理やり自分の方に向けさせる。