曖昧な、人気者


紅茶でも頼もうと厨房に向かっていた足を止め、三階へと足を進める。



ーーー本当、あいつは我儘なんだから。



苛立ちを誤魔化そうと鞄を軽く振ると、廊下に飾られていた花瓶にぶつかりそうになり、慌てて鞄を引き寄せる。



……危ない。あれは確か、数億円の品だ。


顔を青くした私は、それからはおとなしく廊下を歩いていき、1つの扉の前で止まる。