曖昧な、人気者


数十分もすれば、車は閑静な住宅街に入り、そこを奥へと進むと、ーーー「家」に着く。


車を降りたそこにあるのは、確かに「家」なのだけれど、建てた人の趣味だったのか、「家」と言うよりは「お城」という印象を与える。



松方にお礼を言って家の中に入り、玄関で迎えてくれた人達にも挨拶をしながら進んでいると、


「お嬢様。坊ちゃんがお待ちです」


最後に挨拶してくれた一人がそう言い、



「……分かりました」


私はそう返しながら、小さく溜息を吐く。