「なあ、冬穂」

圭汰と別れてから少し経った、ある日の朝。
下駄箱で、灯に声を掛けられた。

いや、朝、灯に声を掛けられるのは、日常になりつつあるのだけど、今日はやけにおどおどとした声色だったため、私はいつもみたいに避けず、足を止めた。


「・・・どうしたの?」
「あの、さ・・・今週の日曜日って、暇?」
「へっ・・・・?」

いきなり何を言い出すのだ、と訝しげに眉を顰めると、そんな私の気持ちを察したのか、灯は慌てた様子でぶんぶんと手を振り、否定する。

「やっ、違う違う!そういう意味じゃなくて!・・・蒼人が、三人で出かけないかって誘ってくれって。それで、その・・・・どう?」

そう誘う灯の口調が、かなり私に気を遣っていると丸分かりで、少し悪いな、と思った。