「確かに、とも、ちょっと不機嫌だったね」
今日あったことを思い出しながら、私達は視聴覚室の中に入ろうとする。
灯曰わく、花火を見るなら視聴覚室が一番オススメらしい。
去年、友達と視聴覚室から花火を見て感動したのだと、ついさっき興奮気味に話してくれた。
「フランクフルトの屋台とか、最悪だったよな。俺らの前で売り切れるとか、ありえねえ」
そう言いながら灯は、ドアノブに手をかけ、視聴覚室のドアを開けた。
「あの時、とも、本当に悔しがってたよね」
「だってマジで楽しみにしてたんだぜ?フランクフルト、大好きだからさ」
灯が背中でドアを支えて、私に中に入るよう促す。
私は、ありがとう、と視聴覚室の中に入った。
視聴覚室は、圭汰との思い出が詰まっている部屋だ。
毎日毎日、ここで会話していた。
初めて圭汰と出会ったのも、あの日圭汰と別れたのも、この広くて質素な部屋でだった。


