沙耶子は三本目の缶ビールを空け、
あたりめにマヨネーズをつけ、それをツマミにしながら、遺影の孝之に話し掛けた。


「三ヶ月前か…
あんたが会社で倒れたのは…
まぁ、何の取り柄もない専業主婦ですからね、
あんたに養って貰っている女ですからね、
取り敢えず、運ばれた病院に行きましたよ。

あんたは病室で寝ていた。

すべての検査が終わってさ…
主治医に呼ばれて、話を聞いたら…
肝臓癌のステージ4だっていうじゃない?
いやぁーびっくりしましたよ!
まさかね…
病に犯されていたなんてね。
それ、ホンマですか?
って聞き直したわ。
咄嗟に出てしもうたん。
あんたの嫌いな関西弁。
いやぁ、それはそれで事実確認せなな…
あんたにとっては役立たずの妻でもな、
あんたの妻は私やから。

そしたらな、もう一度言われたんよ…
暗い顔で主治医の先生に『お気の毒ですが…』ってな。

ここまで放っておいたあんたも悪いんよ?
もう少し早く、異変があった時にでも病院に行っておけば良かったのになぁ…

アホやな…

私は何度か言ったで?
具合悪いなら、病院に行った方がいいって。
だから、ちっとも胸が痛まなかったわ。
それ、自業自得ってやつですから!」


アッハハハハハハハハハハハハハ
沙耶子は缶ビールを片手に大声で笑った。


「悪いのは、あんたやでぇ!」