葬儀も終わり、
やっと喪服を脱いで一人になれた。

シャワーを浴びて、ラフなルーム着に着替え、
冷えた缶ビールを冷蔵庫から出し、
ゴクリと喉を鳴らしながら飲んだ。


「ひゃあ〜
生き返る!
美味い!
今日は暑かったもんな…
これからは、こんな暑い日にあの人を偲ばないといけないのね…
夏に死なれちゃうのはさ、
ある意味しんどいわ。
まぁ、こればかりは仕方ないか。
寿命ってやつだもんね…」


私は孝之さんの遺影を見ながら言った。

「一番貴方が優しそうに見える写真を選んだわ」

遺影の孝之は満面な笑み。
三十六歳で肝臓癌でこの世を去った。


「みんなね、孝之さんの死を惜しんでくれたよ。
良かったね」


沙耶子は缶ビールを飲みながら、話し続ける。


「惜しがられるっていいね。
孝之さんは外面いいからさ〜
死ぬまで上手く騙せたよね?
本当のあなたを知っているのは…
私だけかもね?」

沙耶子は更に二本目の缶ビールを冷蔵庫から取り出し、遺影の前で胡座をかいた。


フッフッフフフフ…
と笑いながら口元を緩めた。


「やっと、二人っきりになれたね」

沙耶子は遺影の孝之に向かって言い放つ。