遺影がカタカタと音を立てて動き出す。

額の中で笑顔だった孝之の写真が、
段々と怒りの篭った鬼の形相に変わってゆく。


「孝之さん!
夫婦は本音を語らないとね!

もう、肉体は滅び、骨になったあなたを怖いなんて思わない!

あなたが大嫌いだった!

私は一日でもあなたより長く生きて、
この日を迎えたかった!

もうね…
大嫌いなあなたの居ない世界に居るのよ!

脅してもダメよ!

成仏しちゃいなさいよ!

あなたの妻はね、
あなたに相応しい女だったのよ。

愛なんてない生活だったから、
あなたの死を受け入れ、正直になれたの。

あなたにお礼を言わないとね…

そんな生活を送ってきたからこそ、

あなたが死んだ事により、十分な慰謝料も頂けた。

最期に思ったわ。

私は幸せな妻だったのよ。

有難う、孝之さん」


遺影を睨みながらも、
ホッとした笑顔に戻る沙耶子。


「これが私の本心」





END