ドキドキするなって方が難しい話だった。 「葉月って呼んでもいい?俺の事は、蓮でいいから」 はい。 そう答えそうになった返事を、慌てて飲み込む。 「え、佐原さんの方がいい?」 「いや、そーじゃなくて!」 返事につまった私に、王子がそう尋ねる。 そうじゃない。 王子に名前で呼ばれるなんて夢のようだ。 でも…私が王子を蓮って呼ぶのは、さすがに… 「私、先輩を、その…呼び捨てっていうのにはちょっと…できません」 それに、今の私には王子は私を雇ってくれている雇い主でもあるのだから。