私の王子様は、冷酷なんかじゃありません


類に言われてはっと気がつく。
そうだった。

店をやめたあの日。私は、鞄ひとつで店を飛び出ていったんだった。

もちろん、長い間住み込みで働かせてもらっていただけあって、私の部屋には私の荷物がほぼ全部残っているわけで…。

類が怒るのも、当たり前な話だった。


「ごめんなさい。ちゃんと整理しにお伺いします……」


「いつ?」


そういって謝る私に、類が有無をいわせないスピードでたずねた。


いつ?という質問に答えられずにいる私に、類が質問をかさねる。


「そもそも、今どこで何してる?」

「ええっと、かせ…」


家政婦。

喉まででかかった言葉をあわてて飲み込む。

勘のいい類にそんなことを言ったら、なんだか面倒くさいことになりそうだったから。