「また寝坊かよ…」

 機嫌の悪い声が聞こえる。
 まあこいつの場合、いつも機嫌が悪いんだが…。

「おっす、セイラ」
「その名前で呼ぶなっつってんだろうが!」

 そんなこいつはセイラ・クロエ。
 名前と顔のせいでよく女の子に間違えられる。
 実際、性格さえ悪くなければ結構美少女な顔立ちだ。
 そのせいで当の本人はだんだん荒んでいきましたとさ。
 
「まあまあ、セイラ落着きなって」

 父さんは今にでも暴れそうなセイラを力づくで抑える。

「くそ親父…」
「え?なんだって?」
「…チッ」