闇の鬼~影を纏いし者~

「いい加減、離してくれないか? 」


僕は、刀を真横に振り抜き、目の前に来る黒い玉を切った。
刀の風圧で少し先にいる黒い玉も切れたようだ。
飛んでくる数が減った。


「離れてもらうぞ。」


横に流した刀を、クルリと回し足元を切る。
ブワッと言う音を残し、影が消える。


「ふう。なんとかなるもんだな。今のうちに移動だ。」


影の呪縛から逃れた僕は、三人の元へ移動した。


「浩介、大丈夫か? 夏子は? 怪我はないか? 」


「大丈夫っス。不意打ち喰らっただけっス。咲夜さん、すんません。」


浩介は傷だらけだった。
鞘だけでは、どうにもならないか。
どうする? 美冬の気配はまだない。
このままだと、消耗が激しすぎる。


「結界を簡単に破るわね。歴代の巫女の能力に美冬の力。ここまで強いなんて。」


咲夜が肩を落とす。
さすがに凹むな。


「咲夜さん! まだ負けてませんよ! 浩介も、まだ大丈夫だよね? 美冬だって、絶対頑張ってる! 咲夜さん、少しの間でいいんです、私に力を貸してください! 咲夜さんの気持ちも、一緒に飛ばした方がいいと思うんです! 」


この状況での夏子の前向きな気持ちは、誰をも強くする。


「そうね。出来ることはやりましょう。結界を張りながらになるわね。浩介君は、無理をしないで。美冬が目覚めるまで、あの人が守ってくれるわよ。」


「おいおい。僕の事かい? そう言われて、出来ません、なんて言えないな。正面は僕がやる。浩介、横からくる奴だけに集中しろ。夏子、頼んだぞ。」


会話の間も、攻撃は止まない。
なんとか凌いでいるが、どこまで持つか。


「夏子、いいわよ。」


咲夜と夏子の周りに、薄い光の壁が出来た。
咲夜は、夏子の手を握り、その力を流している。


「はい! いきます!
美冬! 聞こえる!! 聞こえてるよね!! 起きて!! みんなが待ってるよ! 一緒に帰ろう!!! 届いて! みんなの思い!! 」


言葉に思いが乗る。
言霊と言う言葉があったな。
咲夜の力が加わり、夏子の言葉に魂が乗る。
これで届かなかったら。・・・いや、届くと信じよう。


『グォォ・・・ナンダ?・・・』


明らかに『オニ』の様子がおかしい。
黒い玉の動きも鈍った。


「夏子、もう少しよ。届いてるわ。」


「はい! 美冬!! 目を覚まして!! 頑張って!! もう少しだよ!! 」


『グ・・・・・・・・・・・・な・・・つ・・・こ・・・? 』


『オニ』の声が消え、美冬の声が聞こえた。


「美冬が気づいたわ。夏子、ありがとう。これで封印出来るわね。二人は下がってて。」


苦しそうに『オニ』が小さくなる。
黒い玉も、影も、動きを止めた。
チャンスか?
今なら踏み込める。