闇の鬼~影を纏いし者~

「来るわよ。皆、覚悟してね。

浩介君、夏子から離れないで。

夏子、呼び続けてね。夏子の声なら届くはず。


・・・・・・私は・・・届かなかった。」


咲夜の表情からわかる。
僕の攻撃の後に『オニ』が消えてから、弾き飛ばされるまで、ずっと美冬を呼び続けていたんだろう。
刀の封印を解くために、『オニ』の行動を止めながら、呼び続けたんだ。
その声が、美冬には届かなかった。
どれだけ辛いか。
その思いを、夏子に託すんだ。
夏子なら、答えてくれるだろう。


「咲夜さん・・・。

わかりました! 全力で呼びます!! 美冬が気づけばいいんですよね? 大丈夫です! 声には自信ありますから! 」


「夏子は、守ります。先輩、咲夜さん、封印お願いします! 」


二人からの頼もしい返事。
夏子も、浩介も、美冬も、守ってみせる。


僕は、刀を握り直し『オニ』を見た。


「抗ってやるさ! お前を封印して、美冬は返してもらう! 」


『オニ』から影が出る前に、僕は切り込んだ。
ヤツの懐に入れさえすれば、それで終わる。


「美冬!! 起きて!! 美冬!! 聞こえる?! あんたそのまま寝てたら怒るわよ!! 」


どこから出てるのか聞きたいくらいの大声だ。夏子の声量には驚かされる。


『邪魔をするな 小娘』


夏子の声が気に入らないようだ。
いきなり無数の影が現れた。


「させるか! 」


僕は、影に向かって刀を振り下ろした。


一閃。


刀から放たれた光が、影を切り裂く。
解放された力の強さを目の当たりにした。


「凄いな。地面に傷が付いてない。『オニ』の力だけに反応するのか。」


「そうよ。だから、美冬には気づいてもらわないと駄目なのよ。目を覚まさなければ、『オニ』と同化したまま。一緒に封印されてしまうわ。」


咲夜が、僕の隣に並んでそう言った。
さっき言いかけたのは、この事か。
美冬が目覚めるまで、手は出せないのか。
夏子の声が頼りだな。


「美冬!! 聞こえてるんでしょ?! 起きなさいよ!! 先輩も、咲夜さんも、頑張ってるんだから!

一緒に帰ろう!! 」


夏子は呼び続けている。
『オニ』に、まだ反応はない。


『その刀・・・棟隆か・・・お前も喰ってやる・・・』


『オニ』の視線が僕に変わった。
刀の力を知っているんだ。
矛先が僕に変わるのはありがたい。
美冬が目覚めるまで、相手をすればいいんだろ?


「あら、標的が変わったみたいね。夏子の声が聞こえる範囲で移動してね。『オニ』の力、見縊っては駄目よ。」


咲夜のアドバイス。
『オニ』の強さを物語る。


「わかってるよ。君は、美冬の目が覚めるまで、夏子を守ってくれないか? 影の数がさっきよりも多い。浩介一人じゃキツいだろ。」