「まだだめよ。一体化しないと封印出来ないわ。刀の力が目覚めるまで、止めるつもりだったんだけど、間に合ったかしら? 」


やはり、咲夜が『オニ』の動きを止めていてくれたのか。
感謝しなきゃいけないな。


「間に合ったよ。刀は力を取り戻してる。その影響か、僕にも力が漲っている。一体化してからって、今は駄目なのか? 動かない状態なら楽なんだけどな。」


「見てればわかるわ。ここからが本番よ。浩介君と、夏子に合流した方がいいわね。危険だわ。」


「二人なら、東側に入ったみたいだ。今なら行けそうだ。動けるかい? 」


「大丈夫よ。」


そういったものの、咲夜は辛そうだ。
今まで、『オニ』の中で全力で抵抗していたんだ。無理もない。


「先に行けるか? 僕は後ろから行くよ。何かあっても、僕が守る。」


「ふふふ。お願いね。」


動きを止めた『オニ』の横を通り過ぎ、東側の空間へ入った。


「先輩! 咲夜さん! 大丈夫ですか? どうなってるんですか? 『オニ』は動かないし、美冬が! 」


合流と同時に、夏子は不安をぶつけてきた。


「夏子、よく聞いて。

『オニ』は、私じゃなく、美冬を選んだの。それが、意味することは、私より、美冬の能力の方が高いという事。

もうすぐ、美冬は『オニ』に取り込まれてしまう。

・・・美冬は、心を閉じ込められているの。私達が、封印するまでの間、美冬を呼び続けて欲しいの。

夏子の声なら聞こえるはず。美冬の心が目覚めなければ・・・。」


咲夜の言葉を遮るように、深く、低い声が響いた。


『巫女の血を・・・全て喰らう・・・この娘・・・助けたければ抗うがいい! 』


広間中央近くにいた『オニ』が目覚めた。
美冬を完全に取り込んだんだろう。
美冬の気配の欠片もない。