闇の鬼~影を纏いし者~

「どうして美冬がいるんだろ? 本物ですよね? 」


夏子の疑問に答えはない。
近くで見たわけじゃない。本物か幻か。
『オニ』が見せる幻覚か。


「本物か、偽物か、見極める前に、刀の封印をなんとかしないとな。まだ、完全じゃない。」


刀は、微かに光を帯びているだけだ。


「広間の真ん中でやったやつっスよね? あれは、難しいっスよ。美冬と、『オニ』になってる咲夜さんを止めないと。それに、尻尾がうぜえ。」


浩介の状況把握の良さに驚く。
確かにそうだ。
あの二人を止めないと出来ないだろう。


「私達が囮になっても無理ですか? 他に方法が思いつかないんです。」


真剣な表情で、夏子が言った。
僕も、他に思いつかなかった。
けれど、危険すぎる。


「こっちの空間に誘き寄せて、私達が逃げている間に先輩は刀の封印を解く。で、戻ってきて封印! 逃げ切ればいいんです! 」


簡単に言うな。


「そう、うまく行くか? こういう状況だと、シュミレーションは役に立たないぞ。目の前で消えて、違う場所に現れたんだ。臨機応変って、簡単に言えないな。」


「でも、他にないですよ! やりましょう! 先輩、信じてますよ! 咲夜さんだって! 」


信じてる。
その言葉に弱いな。絆される。
体の奥から力が湧き上がる感覚だ。


「方法がない以上、それでやるしかないな。浩介、夏子はまかせていいな? さっきの感覚からすると、五分。いや、途中まで出来ているから、それより短いかもしれない。踏ん張れるか? 」