闇の鬼～影を纏いし者～

壊される前に、扉を開けた方がいいか？
いや、迷っている暇はない。


「扉を開けるぞ！ こっちが強行突破だ！ 」


言うより早く、僕は扉に手をかけた。


扉を開くと、影が襲いかかる。
躊躇する事なく、僕は影を切り進む。


「凄い数だな。辿り着けるのか？ 」


行く手を阻む影の数が多い。
なかなか前に進めない。


「キャーー！ 浩介！ あっちあっち！ ってゆーか！ 先輩！！ 私も何か持てるものないですか？！ 逃げるだけって無理がある数ですよ！！ 」


開けた扉の向こうから、夏子が騒いでいる。
刀と鞘。その二つしかない。
武器になるようなもの？
思いつかないぞ。


「夏子！ とりあえず走れ！ 本体に当てれば僕に向かってくるはずだ！ 少しの辛抱だ！ 」


浩介の腕も信用している。
浩介は強い。夏子一人守ながら影を切ることは出来るだろう。
問題は僕だ。
『オニ』になった咲夜を見つけなければ、先に進めない。


「どこだ？
ん？ あれか？ くそ！ 短時間でこんなに増えるとはな。誘き寄せる事も出来ないじゃないか。」


黒い塊が見える。
あれが『オニ』に包まれた咲夜だろう。


「？！ 」


見えた瞬間、『オニ』がこちらを向いた。
赤く光る瞳が僕を見つける。


「オォォォォォォォォ！ 」


地の底から響くような咆哮。
地響きのようだ。
これが、巫女の能力を手に入れた『オニ』なのか。