闇の鬼~影を纏いし者~

「!! 」


黒い塊の中で、赤く瞳が光った。
間違いなく僕を見ている。


「こいつはヤバイな。抑えきれないって事か。」


刀を握り直し、東側の扉へ向かった。


「先輩!! 鞘は? 大丈夫ですか?! 」


さすがに、息が切れる。


「ああ、ちゃんと拾ってきたよ。だけど、ここも危ないな。そろそろ本気モードに突入しそうだ。鞘を確認しよう。」


僕は、ベルトから鞘を引き抜き、何か浮かび上がってこないか確認した。


「なんもないっスね。鞘じゃないんじゃないっスか? って、でも、他にないっスもんね。」


浩介は不満気にしている。


「先輩、刀を一度納めてください。」


夏子に言われ、刀を一度鞘に納めた。
すると、鞘が光出した。


「夏子、すごいぞ! 文字が浮かび上がってきた。」


鞘にも文字が彫られていたようだ。


「汝 闇 滅ぼさん 央に立ち 我捧げよ
彼の者を信じ 彼の者を貫け」


「これだけか? 解読は難しくないな。」


「そうですね。先輩が闇を滅ぼす。央って広間の真ん中ですかね? そこで刀を誰かに捧げるの? 彼の者は、たぶん咲夜さん? でも、貫けってことは、刀で刺せって事ですよね? 先輩、出来そうですか? 」


夏子の解読は、ほぼ正解だろう。
僕も他に思いつかない。
広間の真ん中か。難しいな。


「迷わず、咲夜を信じて貫けって事か。それは問題ないな。刀の力を信じればいいんだろ? ただ、広間の真ん中は難しいぞ。『オニ』が動かない限りはな。」


広間の真ん中当たりで咲夜は闇に包まれた。
僕が、鞘を取りに行っている間、動いた気配はない。


「夏子、下がれ。先輩、強行突破は止めたみたいっスね。これって、ホラーっスか? 俺、あんまり信じてなかったっスけど、リアルに見ると信じるしかないっスよね。」


浩介が、異変を察知した。
文字に夢中になり過ぎたようだ。
東側の扉を見ると、黒い影が滲み出るように扉を包んでいる。


「うわ! 気持ち悪い! やだやだ! 浩介!! ちゃんと守ってよ! 」


夏子は、浩介の後ろに隠れた。


「方法はわかった。浩介、鞘を持っていろ。少しは効き目があるかもしれない。」


文字が浮かび上がった事で、鞘にも力を感じた。
丸腰の浩介に、少しでも何か持たせたかった。


「何もないよりマシっスよ。夏子守るので手一杯になりそうなんで、先輩、頑張ってください。」


頼もしい。
夏子と浩介を守ながらは難しい事だ。
僕一人なら、広間に切り込める。