闇の鬼~影を纏いし者~

「どうします? 一度東側に入ってみます? 付いてこなければ、ラッキーですよね。尻尾みたいなやつを避けて、こっちに戻ってくれば鞘は拾えますよ? 」


夏子の提案。
一理ある。
だが、咲夜が、動かなかったら?
いや、動かない方が都合がいいか?
夏子と浩介を東側に走らせ、僕は鞘を取りに行くか。
駄目だな。攻撃手段がない以上、浩介でも夏子を守るのが難しくなる。


「そうだな。一度東側に行こう。何か手を考えないと駄目だな。」


東側への移動を決めて、僕達は再び走り始めた。


影の動きはまだ遅く、東側の空間には簡単に入れた。


「ふう。まいったな。もう少しわかり易く書いてあればいいのにな。」


僕は、刀身を見つめ呟いた。


「そうですよね。なんでこんなに中途半端なんだろ? もしかして、封印する方法って、ちゃんと語り継がれていたのかもしれないですね。」


夏子の閃きは、たまに真をつく。
サトさんも言っていたが、語り手と聞き手の関係が薄くなっているようだ。
語り継ぐ途中で、面倒な事は言わなくなったのかもしれない。


「けど、どうするんスか? あの尻尾、結構ヤバイっスよ。先輩の刀で切れるんスかね? やらなきゃやられるだけっスよ。」


浩介の言う通りだ。
この刀で切れなきゃ意味がないだろう。
他に武器はないんだ。


「二人はここにいろ。僕が行ってくる。」