闇の鬼~影を纏いし者~

「咲夜!! 」


呼んだところで抗えないだろう。
靄は集まり影になった。
その影に咲夜が包まれる。
と、同時に扉の開く音がした。


「先輩!! って、キャーー!! 何あれ!! ちょっと浩介! ムリムリ!! 」


咲夜が影に包まれる瞬間、西側の扉から、夏子が戻ってきた。


「うおっ!! なんスか?! すげえヤバイ感じしますけど! 」


浩介も感じ取ったようだ。
ヤバイって言うレベルじゃない。


禍々しいにも程がある。
これと戦うのか?



「夏子! 刀は?! 」


僕は、西側の扉に張り付くように動かない夏子に向かって叫んだ。


「ちゃんとありましたよ! 先輩! もしかして、あれって咲夜さんですか?! 」


「そうだ。夏子動けるか? 浩介、何があっても夏子を守れ。」


僕は、西側の扉まで走り、夏子から刀を受け取った。
浩介は、夏子を庇うように前に出た。


「二人とも、部屋には入るなよ。逃げ場が無くなる。この広間か、東側の扉の向こうへ逃げるんだ。あれに追いつかれずに封印の方法を解読? 無理だろ。」



夏子と立てたシュミレーションでは、刀を受け取り、封印の方法を解読出来るだろうと思っていた。
その時間すらないのか。



咲夜を包んだ影は、次第に形を成してきた。
『オニ』と呼ばれた由縁はわからないが、人の形に近いもので表現されたのか?
現代で考えると、少し違うぞ。
どちらかと言うと、八岐大蛇っぽいぞ。


「なんですか! あれ! 『オニ』って角があって、棍棒持ってて、ムキムキマンですよね? 違いすぎる! 尻尾生えてるし! 」


夏子も、想像と違ったことに文句を言っている。
が、やはり緊張感のない表現だ。
それにしても、あれは尻尾か。
いくつかに分かれた影が蠢いている。


「先輩。夏子が言ってる尻尾、あれ来ますね。俺ら丸腰、先輩の刀だけで何とかなるんスか? 」


浩介の懸念は当たっている。
自らが攻撃ではなく、纏っている影が襲ってくるだろう。


「まずは、解読だ。咲夜が抵抗してくれているんだろう。動きがない。今のうちに移動して、封印の方法を見つけるぞ。」