「いよいよですね! 先輩! 頑張りましょう! 」


階段を降りながら、夏子が後ろから騒いでいる。
まったく、緊張感が無いやつだ。
次郎さんにも言われたが、夏子の明るさは不安感を失くすな。
何とかなるんじゃないかと思ってしまう。


「テンション高いのはいいが、夏子、お前が一番先に動くんだぞ。浩介と刀を取りに行くんだ。僕は、咲夜といるよ。一人で待たせたくない。」


どのタイミングで咲夜が『オニ』になるのかわからない。
一人にしたくない。


「任せてください! 広間に着いたらダッシュで取りに行ってきます! 浩介!! ちゃんと付いてきてね!! 」


やる気があるうちにお願いしたいな。
『オニ』がどんな形なのか、わからないが、夏子は、あまりお化けといった類が好きじゃない。
見た目が悪ければ、気持ちがついて行かなくなるかもしれない。


「任せたわよ。私は、自分の意思を保つ努力はするけれど、自分の意思で身体を動かすことが出来るのか、わからないわ。
貴方も、危険を感じたら離れてね。」


誰も知らない事だ。
今までに、何人もの巫女が『オニ』になってきたはずだ。
けれど、そうなったあとの情報は残されていない。
生き残りが居なかったのか。どこかで途絶えたのか。


「わかっている。」


危険を感じたら、か。
咲夜が言うんだ。従おう。


会話を交わすうちに広間に着いた。


「じゃあ先輩! 取ってきますね! 浩介!! こっち! ちゃんと付いてきてよ!! 」


「わかったよ。先輩、咲夜さん、夏子と戻るまで、気張ってください。」


広間に着くなり、夏子は走り出した。
左側、白虎と朱雀の間にある扉に向かって。
その後ろを浩介が追いかけた。


刀が早いか、『オニ』が早いか。