闇の鬼~影を纏いし者~

いつもは、一時間近く入っているのを、30分と短めに切上げて、僕達は、書斎に向かった。


「オバァ様、入ります。」


咲夜が声を掛け、僕達はあとに続いた。


「さあ、座って。もっと楽しい話ができれば良かったんでしょうけど。」


僕と咲夜、夏子と浩介、二人がけのソファーに腰を下ろした。
全員が座ったのを見計らって、千影さんが話し始めた。


「咲夜、限界まで自分を保ちなさい。貴女が出来るのはそれだけになるわ。

浩介君でいいのね? 貴方は、夏子さんを守るのよ。何があっても。それだけを考えて動けばいいわ。

貴方達 二人は、何か考えがあるんでしょう? 言わなくていいわ。咲夜にバレてしまいますからね。」


僕と夏子の考えはお見通しか。

あれから夏子とシュミレーションは立てたが、どこまで通用するか・・・。

浩介は、夏子を守るだけでいいのか。
二人が常に一緒ならやりやすい。


「あの。俺は、夏子を守ればいいだけって、一緒に居ればいいってことですか? 」


「そうね。かなりの運動量になるかもしれないけど、大丈夫そうね。」


浩介の体力に不安がなさそうな言い方だ。


「運動量って? あんまり状況がわかんないっスけど、やります。」


「あら? 話をしていないの? 」


「オバァ様! 浩介は、言ってもわからないんです! その時の状況で体が動くタイプなんで! 」


夏子の、酷い説明が入った。
話せばわかるだろ。


「夏子・・・。浩介に話をしなかったのか? 何があるかくらいは説明しておけよって言っわなかったか? 」


帰ってから今日までに、夏子に説明を頼んだ僕に責任があるな。


「言いましたよ! 咲夜さんが、誕生日に『オニ』になっちゃうから、それを封印する為に、先輩と、私と、浩介が頑張るんだよ! って! でも、浩介は、意味わかんないって言うから、スルーしました! 」


その説明で、意味が分かる方が凄いよ。
何を頑張るんだ?


「夏子さんらしいわね。私から、簡単に説明しましょうね。」


千影さんは、浩介にわかるように説明を始めた。


「明日、咲夜が誕生日を迎えます。

私達の家系は、昔から巫女の能力を持って生まれてくるんです。

昔、この村に現れた『オニ』を封印した際に、呪いをかけられました。二十歳になる時に喰らう。というものです。私が二十歳の時には『オニ』は現れませんでした。けれど、咲夜の誕生日には、現われるでしょう。その時に、封印する者として、あなた達三人が選ばれているの。

夏子さんは、封印する為の刀を運ぶ役割を持っているわ。あなたは、その運び手を守る役割があるの。封印が終わるまで、守り抜いてほしいの。封印が終われば、運び手は刀を納に行かなければいけない。最後まで重要な役割なの。

浩介君、出来るかしら? 」


珍しく、浩介が黙って聞いている。
櫓作りから、少し変わったな。