帰る途中、資料館に浩介を迎えに行った。


千影さんの家に泊まっている間も、夏子は浩介とメールでやりとりをしていたようだ。
今日、帰ることも知っている。


あの櫓がどこまで出来たのか、興味が湧く。


「先輩! 先に行きますね! 」


資料館に着くなり、夏子は櫓作りの場所へ向かった。


「二週間近く会ってないんだもの。嬉しいんじゃない? あなたは、浩介君より、櫓が気になるみたいだけど。」


クスクス笑いながら、咲夜に言われた。
見抜かれている。
完成、とまではいかないだろう。
見たい気持ちを隠せないらしい。


「気になるさ。あの大きさ、ホールにあった櫓を見ただろ? あのレベルの物を作っているんだ。どこまで出来上がったのか楽しみだよ。」


僕は、隠さず気持ちを話した。


「そうね。楽しみだわ。私達も行きましょう。」


僕達も、夏子を追って、櫓作りの場所に向かった。


「こんにちは、お邪魔します。
うわ! 凄いな。下組しか見ていなかったから想像できなかったけど、立派だな。」


作業場に入るなり、目の前に完成間近の櫓が飛び込んできた。


「先輩! どうっすか? ヤバいっすよ! もう少しなんですよ! 俺、最後までやりたかった! 」


嬉しさを隠せずに、浩介が寄ってきた。


「本当に凄いな。浩介、いい経験ができたな。これは、本当に凄いよ。」


浩介の感情がそのまま僕に流れてきた。
僕まで高揚してしまう。
それほどの圧倒感がある。


「おう! 今日帰るんだって? 凄いだろ? 短期間で、二人でやったにしちゃ、上出来だよ! 一時はどうなるかと思ったが、浩介が居てくれて助かったよ! ありがとな! 」


櫓の裏から、冴木さんが顔を覗かせた。


「一真さん! ありがとうございました! 俺、いつか戻ってきます! 次は、最初から最後までやりたいっす! 」


「待ってるよ。いつでもいいぜ! 浩介なら大歓迎だ! 」


ここに来て、浩介は人生の歩き方を見つけたのかもしれない。
それは、浩介に流れている血が、そうさせているのかもしれないな。


僕達は、冴木さんにお礼を言って資料館を後にした。