「え? いえ、大丈夫です! 先輩が、走りながら勉強しよう! なんて言うから、そんな器用な事が私に出来るのか考えちゃっただけです! 」


「あら、それはなかなか難しいわね。日を決めて分けた方が効率がいいわよ。」


千影さんから言われてしまったので、勉強と体力作りと、交互にする事にした。


「先輩、今日はどっちにします? 私は、走る方がいいな! 」


どこまでも勉強から遠ざかりたいようだ。
今日は、天気もいいし、走るのには最適だな。


「ふふふ。夏子は元気ね。明日は、私も勉強会に参加しようかしら。」


咲夜も乗り気のようだ。
何を話したかわからないが、少し無理をしているようにも見える。


「食事の後に、すぐ動いては駄目よ。少し休憩してからにしなさい。体調を崩すわ。
私は、出かけますから必要な事があれば、知恵さんにお願いしなさい。」


千影さんは、予定があるようだ。


「わかりました。ありがとうございます。」


僕は、お礼を言って昼食の残りを片付けた。


食事の後、中庭で準備をしていると、咲夜が呼びに来た。


「少しだけいいかしら。」


大切な話があるようだ。
咲夜から緊張感を感じる。


「何かあったんだろ? 」


僕は、答えた。
千影さんに何か言われたんだろう。


「ええ。夏子も聞いて。
オバァ様に言われた事を伝えるわ。

私の中だけに閉じ込めておく内容じゃないの。知っていて欲しい事。
私の誕生日、私は、『オニ』になるわ。

なる前に封印出来るのか探していたけど、確実にそれは無理なの。『オニ』にならないと封印出来ないと言われたわ。」


咲夜から衝撃的な事実を聞かされた。
『オニ』にならないと封印出来ない?!
それは、確実に『オニ』になった咲夜と戦うってことじゃないか。


「本当ですか?! 『オニ』にならないと封印できないって! オバァ様は、その事を知っていたんですか?! 」


夏子が驚くのも無理はない。
これまで、一切出なかった内容だ。
僕も、驚いている。


「知っていたようね。記録に書かなかったのは、私が二十歳を無事に超えた時に話す予定だったのよ。だけど、私は、夢を見た。その時が来る前に教えてくれたのよ。」