思ったよりも鎌はよく切れた。
中腰で草を刈りながら進むのは大変な作業だな。
どこまで進めばいいのかわからないぞ。
そんな事を思っていたら、後ろから咲夜が呼び止めた。


「待って! 何か聞こえるわ。何かしら? 小さくて・・・・・・。」


僕達は立ち止まり、静かに咲夜の反応を待った。


「右?

上じゃない。

そう言っているわ。右に何か見えるかしら? 」


右だって? どこを見ても草だ。


「わからないな。とりあえず、右側の草を切ってみるか。」


僕は、右側の草を少し広い範囲で刈り始めた。
五メートル程進むと、地面にポッカリ穴が空いているのが見たえた。


「穴があるぞ。

ん? 下に降りられるようだな。階段がある。」


昔の防空壕のような感じだ。


「ここね。間違いないわ。声も中へ入れと、言っているわ。」


「咲夜さん? さっきから何か聞こえてるんですか? 私、全然わからないですけど。」


僕にも聞こえない。
咲夜にしか聞こえないんだろう。


「私だけのようね。たぶん、巫女の能力のせいじゃないかしら。夢で聞いた声と同じだもの。」


予知夢だけじゃなく、現実でも声が聞こえるのか。
咲夜の能力が強い証拠なんだろう。


「降りてみよう。僕が先に行くよ。何があるかわからないからな。社を開けるのが夏子ならいいんだろ? 」


「大丈夫じゃないかしら?

ちょっと暗いわね。何か灯を持ってくればよかったかしら? 」


咲夜の言葉に思い出した。


「ライターを使うのか?

松明でもつくるか? 」


僕は、辺りを見回したが適当な物が見つからない。


「先輩! あれ! 燭台じゃないですか? ちょっと暗くてわかんないですけど! 」


夏子の視線の先、壁に何かが掛かっている。


「これか?

当たりだな。 蝋燭もある。これで中が良く見えるな。」


僕は、次郎さんに借りたライターで、蝋燭に火を着けた。


当たりが明るくなり、進む先が照らされた。


「深いな。まだ降りるみたいだ。」


燭台を持ち、僕は、先に進んだ。
かなり深い位置まで降りただろう。
気温がかなり下がった。
階段を降りた先には広い空間があった。


「寒い!! ここ冷えすぎじゃないですか? 夏ならいいけど、冬に来たら凍死しちゃいますよ! 」


「そうね。かなり降りてきたから太陽の熱も届かないのね。夏子、大丈夫? 」


「大丈夫です! あっ!! お社ってあれじゃないですか?! 」


また夏子が何かを見つけた。
目がいいのか?
いや、運び手としての何かが働いているのかもしれないな。
空間の奥には、少し横長の社があった。


「これを、私が開ければいいんですよね。何か呪文とかあるのかな? 普通に開けちゃって大丈夫ですかね? 」


呪文って・・・・・・。


「必要ないようよ。社を開けって言っているわ。」


咲夜には、まだ声が聞こえているようだ。


「じゃあ、開けますよ! 」