門の前で表札を探したが、それらしいものはなかった。


千影さんの家よりひと回り程小さい家の隣に、風車が回っていた。


「どなたのおうちなんですかね? 入っちゃっても大丈夫なんですかね? 」


夏子は、風車を近くで見たいらしく、背伸びをしながら覗き込んでいる。


「大丈夫よ。玄関まで行って声をかけてみましょう。」


言うなり、咲夜は門を潜り歩いていた。


僕らも、咲夜の後に続き門を潜った。


玄関の前まで来たが、人の気配が感じられない。


「ごめんください! どなたかいらっしゃいますか? 」


僕は、玄関を軽く叩き呼んでみた。


「返事ないですね。お出かけしてるんですかね? 」


返事というより、人の気配がない。
生活はしているようだが、留守なのか?


「すいませーん!! 誰かいませんかーーー!!! 」


夏子が、これ以上ない声で呼び始めた。


「やはり、留守か。困ったな。」


玄関の前で、立ち往生か。
この先のヒントがない以上、1度戻るしかないのか。


「先輩! 声聞こえません? ほら! 」


夏子は、何か聞こえたようだ。


「誰かいますかーーー!! 」


夏子は続けて呼び始めた。


その時。


「なんじゃー! ちょっと待っとくれ! 」


風車の方から声が聞こえた。


「ほら! 先輩、誰かいますよ。」


「風車の方だな。行ってみよう。」


僕達が、風車のある方へ歩いていくと、風車と家の間から男性が出てきた。


「はいはい、すまんね。どちらさん? 」


外の仕事が多いのか、日焼けした初老の男性が現れた。


「すみません。お忙しいところ。私、朱桜千影の孫の咲夜と申します。オバァ様に言われ、こちらにお邪魔させていただきました。」


咲夜が、挨拶を兼ねて千影さんの名前を出した。


「千影さんの?! あんた、咲夜ちゃんか。覚えてないかな? 次郎だよ。」


「えっ?! 次郎さん? それじゃ、ここは九栗の? 」


記録に書いてあった人物だ。

九栗 次郎。