翌朝、僕達は書斎にいた。


「どうかしら? 少しは解読できたのかしら? 」


開口一番、千影さんから質問された。


「記録は読みました。オバァ様の努力、無駄に出来ませんね。」


咲夜は、本を机に置き、座り直した。


「これくらいの事しか出来なかったのよ。情けないわね。お爺様に聞くまでは、私が封印者だと思っていたのに。」


千影さんは、事実を知った時に、かなり落胆したんだろう。
表情が、悲しみに満ちている。


「お爺様、私からだと、曽祖父になりますね。オバァ様が誕生日を迎えるまで、何も仰らなかったんですか? 」


それは疑問に思っていた事だ。
『オニ』にならないかもしれなかったんだろう? 何故言わなかったんだ?


「お爺様も、半信半疑だったのよ。

本当に、『オニ』が存在するのか。

それに、刀を持つものは棟隆の血を引く者。あの人が、その血縁かわからなかったのよ。
実際、刀を持つことは出来ましたから、血縁ではあったようね。」


どういう事だ? 棟隆の血縁でなければ刀は持てないのか?


「刀を持てたという事は、棟隆の血縁である可能性が高いの。だけど、私が選ばれなかったのよ。お爺様も、覚悟はしていたようなんだけど、無傷で戻った時に、お前じゃなかったのか、と言われたわ。安堵と落胆、両方ね。」


やはり、自分の孫が生死の際にいるんだ、無事に帰れば安心するだろう。
反面、終わらなかった事実が突きつけられるのか。
やってられないな。


「刀は、鏑木家が守るっているというのは、今も続いているんですか? 」


僕は、刀の存在が気になっていた。
それがなければ封印は出来ないのだろう?


「それは、あなた達の目で確かめていらっしゃい。もう始まってしまっているの。私が、教えられることは限られているわ。」


なるほど。
自分達で探せ、という事か。
ヒントは与えられている。


「ここを出て、左に行くと風車のある家があるわ。まず、そこに行きなさい。咲夜、見えるものが全てではありません。惑わされないよう気をつけなさいね。」


千影さんが、次のヒントをくれた。
風車のある家。
そこに何があるのか。
行ってみないとわからないな。


「先輩! 次に行くのは風車のある家ですよ! 朝ごはん食べて、ちゃっちゃと行っちゃいましょう! 」


静かに聞いていたと思ったが、夏子は、相変わらず、朝からハイテンションだ。


「夏子さんは、元気ね。その物怖じしない事が、この二人を助ける事に繋がっているのね。」


「そうなんですか? 私、これが普通なんですけど、迷惑じゃないんですかね? 」


夏子は、それなりに気にしていたらしい。


「あなたも、あなたのままでいなさい。とても大切な事よ。」


夏子の存在は、大きな役割があるようだ。
僕も、自分を保てればいいんだろう。
何があっても。


僕らは、それぞれ思いを胸に、食堂に向かった。