闇の鬼~影を纏いし者~

少し間を置いて、咲夜が言った。

「新しい名前が出てきたわね。私は、よく知っているわ。ここに来ると必ず挨拶に来るの。九栗(クグリ) 次郎さん。」


「えっ?! その人って! 本に出てくる次郎さん?! 」


「間違いないわね。もう1人、あの人って言ってるけど、お爺様だと思うわ。オバァ様、わざと名前を書かなかったのかしら。」


千影さんの、過去を垣間見て、その時の純粋さに心が和んだらしい。
咲夜の表情が少し穏やかだ。


「ここまででわかったのは、

九栗家に地下があること。

刀は、祠に奉納されている事。

たけど、鏑木家の名前が出てこなかったな。この先に書かれているのか? 」


これだけでは、大きな収穫とはいえない。
本は最初の数ページを読んだだけだ。


「少し休憩しましょうよ! まだまだ、先は長そうですし! それに私、お風呂入りたいです! 」


「そうね。このまま読んだら朝になってしまうわね。ゆっくり体をほぐしてから再開しましょうか。」


僕らは、2階にあがり荷解きを始めた。