闇の鬼~影を纏いし者~

~記録より~

あの日、私は『オニ』にならなかった。
夢を見たのに。
次郎さんも、あの人も、胸をなでおろしている。

私で終わらなかった。
後悔の念しかない。

私の孫、またその孫、覚醒的に能力は受け継がれるでしょう。

その子達の為に、私が知っていること、これから知ることを、ここに残します。

この記録が役に立つことを願って。



×月〇日

私の誕生日まで半年。
この頃から夢を見るようになった。
『オニ』が来る。
私は、お爺様に夢の話をした。

お爺様は、あの人を呼び、刀を用意するよう手配した。
次郎さんと、あの人は、祠に行き、『オニ』との戦いに向け準備を始めた。


×月〇日

私の誕生日。
九栗の家から地下へ。

封印の場所で、私達はその時を待った。

けれど・・・・・・。



『お前じゃない』



その声を残して、闇は消えた。

私は『オニ』にならなかった。



×月〇日

この日、二人は刀を祠に納に行った。

もう『オニ』は出ない。
何故、私じゃなかったのか。


今日からは、封印するもの、ではなく、語り継ぐものとして歩むことになる。


調べなければ。
私じゃなかった理由。
なぜ、朱桜が『オニ』になるのか。


次のページには
~『オニ』についてわかったこと~
と書いてあった。


僕らは、一旦読む手を止めた。


千影さんは、『オニ』になれなかった。
後悔の念しかないと書いてあった。
その思いで、この本を残したのか。


そんな思いを頭の中で考えていた。

それを知ってか知らずか、夏子が口火を切った。


「咲夜さんのオバァ様は、夢を見たのに『オニ』にならなかったんですね。他の二人はホッとしたってことですよね。なんか狡い。」


夏子の言う事もわからなくもない。
僕だって、咲夜が『オニ』にならなかったら、胸を撫で下ろすだろう。
だが、咲夜がならなかったら、美冬が『オニ』になってしまう。


「そうだな。だけど、僕らが選ばれているなら、僕らがやらなければならないだろう。」


僕らの会話を他所に、咲夜は何かを考え込んでいた。