食堂に入ると、大きなテーブルにいくつもの皿が並んでいた。


「すごーい! 美味しそう!! 私、どこに座ればいいですか?! 」


夏子がはしゃぎ始めた。


「好きなところにお座りなさい。好きなものを自由に食べていいのよ。」


千影さんは、少し楽しそうに喋っている。


「オバァ様。」


咲夜が、申し訳なさそうに声をかけた。


「いいのよ。いつも一人でしょ?

人が集まることが少ないの。

大人数で食事なんて、華やかで楽しいわ。」


ここで、一人で食事か。
それは、寂しいな。
夏子が迷惑じゃなければそれでいいか。


「さあ、みんな座って。楽しみましょう。」


言われる前に座っていた夏子は、どれから食べるか物色を始めていた。


「いただきます! きゃー! どれにしよ? どれも美味しそうで悩む! 」


言いながら、自分の皿にいくつも取り分けている。


「ふふふ。大丈夫よ。悩まなくても、全部食べられるんじゃない? 」


夏子を見ていた咲夜が、笑いながら答えた。


「浩介がいたら、端から順に空になりそうだけどな。僕らだけじゃ残してしまうんじゃないか? 」


「大丈夫ですよ先輩! 食べながら、さっきの本を読んで、検証しましょう! お腹がすいたら、頭の回転も鈍くなるんですよ! 」


頬張りながら、夏子は提案してきた。
腹が減っては戦は出来ぬ、か。


「そうだな。満腹にならないようにしろよ。頭を使う前に眠くなるぞ。」


大丈夫! と言わんばかりに、夏子は箸を進めている。


和やかな時間が過ぎている。
これから何が起こるかわからないのに。
心が穏やかになる。
失いたくない時間だな。

そう思いながら、僕は食事を進めた。