闇の鬼~影を纏いし者~

コンコン。


「咲夜です。」


ノックとともに、咲夜が声をかけた。


「お入りなさい。」


中から千影さんの声が答えた。


「失礼します。」


声に導かれ、僕達は部屋に入った。

書斎と言っていたが、リビングレベルの広さがある。
壁一面に書棚。アンティークな机。

真ん中に、ソファーのセットが置かれていた。
そのソファーに千影さんが座り、僕達を迎えてくれた。


「さあ、座って。暫くいるのでしょう? ゆっくり話をしましょう。」


僕達は、千影さんの前に並んで座った。


「飲み物は? 若い人は何がいいのかしら? 知恵さん! 」


右の扉から、知恵さんと呼ばれた女性がトレーを持って現れた。


「何がいいかしら? 珈琲? 紅茶? 」


「私、冷たくて甘ければ何でも大丈夫です! 」


「僕は、珈琲を。」


「私も、珈琲で大丈夫です。」


お手伝いさんだろうな。僕達の注文を聞いて、また扉の向こうに戻っていった。


「隣が食堂になっているの。夕飯はそこで食べるといいわ。ここにいる間は、あなた達は、私の大切な家族よ。もてなしはさせてちょうだいね。」


扉が開き、知恵さんが飲み物を運んで来た。


「ありがとう。今日はもういいわよ。ご苦労様。」


「では、今日はこれで失礼します。」


お辞儀をして、知恵さんは食堂に戻っていった。


「食事は、いつでも用意できるようにしてあるから、好きな時間に食べるといいわ。」


「オバァ様。」


咲夜が何か言いたげだが、千影さんは、それを制止した。


「いいのよ。この位はさせてちょうだい。これから、あなた達は、自分達の力で切り開くことになるのだから。私は、その手伝いをするだけ。」


やはり、千影さんは何か知っているようだ。
自分の手で切り開く。
出来るのだろうか。
いや、出来なければ、咲夜を失うことになるだろう。


「そんなに固くならなくてもいいのよ。と、言っても難しいかしら? 夕飯の時間まで少しあるわね。それまで、話を聞きましょうか。」


千影さんは、時計を見て座り直した。


「咲夜。あなたはどこまで視たの? 」