車から浩介の荷物を出し、2週間の間、冴木さんに迷惑だけはかけないように念を押し、浩介と別れた。


「もう、びっくり! あんな浩介初めて見た! ちょっと見直しちゃったなぁ。」


「あら、夏子。珍しいわね、褒めるなんて。浩介君が聞いたら驚くわ。」


僕も褒めたいくらいだ。
あんなに真剣な浩介は初めてだ。
夢中になれるものが出来ると人は変わるというが、間違いないな。


「さて、僕達は、僕達の目的を果たしに行こう。山を降りたら右でよかったな? 」


「ええ。右に曲がったら、しばらくは真っ直ぐよ。」


咲夜に道を確認し、僕らは資料館を後にした。


車の中で、サトさんから聞いた話しを纏めることにした。


「まず、『オニ』との戦いは、何百年も前からあった。
そして、戦ったのは巫女の一族。
ある時を境に、闇のような妖怪から『オニ』に変化した。
その『オニ』は封印された。
簡単に纏めればこんな感じだな。」


僕は、サトさんから聞いた話を思い出しながら纏めてみた。


「巫女さんは綺麗だった!! これ大事ですよ! 先輩!! 」


そこは大事なのか?
夏子の観点がわからないな。


「ふふふ。そうね。合ってるわ。
封印後、祠を守ったのが鏑木家。代々巫女の血筋と言っていたわね。」


そうだ。巫女の血筋と言えば、咲夜は当てはまるだろう。
他にも分家のような形で残したのか?


「たぶん、封印した巫女の血筋が私達。戦ってきた家系が同じ血筋で、祠を守る形になった。と、考えるのが妥当かしらね。」


「でも、咲夜さんが夢を見たってことは、『オニ』の封印が解けるって事なんですかね? 」


「どうかしら? 封印も効力の期間があるのかしらね? 」


どたらにしろ、咲夜に危険が迫っている事には間違いない。
『オニ』になってしまったら、封印できるのか。封印したら咲夜はどうなるのか。
分からないことだらけだ。


「そろそろか? 咲夜、どの家だい? 」


見渡す限りの畑、野原、その中にポツポツと家が建っている。


「突き当りよ。門からそのまま中に入っても大丈夫よ。」


心做しか咲夜の言葉に緊張を感じる。

突き当りにある大きな門を潜り、中庭? と呼んでいいのか? に車を停めた。
僕らは、車を降りて家を見上げた。


「大きい! すごぉい! うちの何倍? 」


夏子が感嘆の声を上げている。


車から荷物を降ろし、玄関に向かった。

咲夜は、躊躇なく玄関の引き戸を開け、中に入った。


「咲夜です。オバァ様、いらっしゃいますか? 」


声をかけると同時に、奥から1人の女性が現れた。


「待っていましたよ。こんな形であなたに会うなんて、これも運命なのかしらね。」


そう言って、僕達の前に立ったオバァ様は、凛とした空気を纏った気品のある女性だった。
どこか、咲夜に似ている。


「初めまして。私が、咲夜の祖母、朱桜 千影です。遠いところから大変だったわね。2階に部屋を用意してあるから、荷物を置いて、奥の書斎にいらっしゃい。」


そう言って、オバァ様は奥に入っていってしまった。


「お邪魔します。」


返事のタイミングを見失ってしまい、他に何も言えず、僕達は2階にあがった。