「そうか。ここからだと30分もあれば着くだろう。連絡はしてあるのかい?」


「今日、私達が来ることは知っているわ。」


やはりオバァ様頼みになりそうだ。


「先輩! 」


突然夏子が呼び止めた。


「ん? どうした? 」


振り向くと、夏子が真剣な眼差しで近づいてきた。


「さっきのお婆ちゃん、珍しい苗字だったじゃないですか。それに、祠を守っている人も鏑木って言ってたし。ここって珍しい苗字の宝庫なんですか? 」


そこが気になったのか。
確かに珍しい苗字が多いようだか、それは問題ではないと思うが。


「そうね。東雲や鏑木は珍しいわね。」


「ですよね! 先輩は帯刀(タテワキ)でしょ? 咲夜さんが橘(タチバナ)ですよね? 先輩達も珍しいと思うんですよ。ちなみに、咲夜さんのオバァ様って橘なんですか? 」


「ふふふ。違うわよ。オバァ様は母方になるから。朱色の朱に桜と書いて朱桜(スオウ)よ。母の旧姓になるわね。」


「また、珍しいですね。うわぁ、なんか興味が湧きますね。お嫁さんに来るなら、イケメン+苗字かな! 」


だから基準が間違っているだろ。


「それより、浩介君はどこなのかしら? 移動するにも探さないと駄目ね。」


そういえばそうだ。
浩介は何処にいるんだ?
夏子を守ると言っておきながら、そばにいないなんて珍しいな。


「あっ! 浩介なら、途中で置いてきたんです! なんか櫓作りをしてて、見たいから先に行け! って言われたんで。」


あの櫓か。確かに興味が湧く。
作る工程が見れるのか。


「あら。ここにも1人興味がある人がいるみたいね。」


クスクス笑いながら、咲夜が僕を見ている。


「そんなことないさ。僕は、浩介が夏子を先に行かせるほどの事があった理由が気になるだけさ。」


「ふふふ。そういう事にしておきましょうか? 」


咲夜には見抜かれている。
そんなに、顔に出たか?


僕達は、浩介のいる櫓の作業場に向かうことにした。