「さあ、着いたぞ。ここで何か情報があればいいんだが。」


僕達は車を降りて、資料館の入り口に向かった。


「先輩! 私と浩介は、外から情報集めますね! こんなに広くて、色んな展示があるなんて思わなかった! 先輩達は中をお願いします! 」


突然の夏子の提案。
僕達の返事を待つこと無く、夏子は浩介の手を引っ張り資料館の右側へ向かっている。


「おい、夏子! 何かあったらメールをするんだぞ! 」


「浩介君。夏子頼むわね。」



夏子は、僕らの言葉に手を振るだけで答えている。


「やれやれ、参ったな。」


「夏子、こういったものが好きだから仕方ないわ。情報集めるって言いながら、展示を楽しむんじゃないかしら? 」


「そうだな。仕方ない。僕らは中で話を聞こう。受付で地元の話に詳しい人がいないか聞いてみよう。」


僕らは資料館の入り口をくぐった。
中は吹き抜けになっていて、かなり明るい。
入り口正面に大きな櫓(ヤグラ)が置いてあった。
2階にあがる階段がその左右についている。


「立派な櫓だな。これも手作りなのか。すごいな。」


櫓は、見たままの感想を言ってしまうくらい荘厳で、魅了されるものだった。


「そうね。なんて立派なのかしら。」


僕らは、暫く櫓に魅入ってしまった。


「・・・ゆっくり鑑賞したいが、目的を忘れそうだ。受付はどこだろう? 」


僕は、もう少しゆっくり櫓や展示品を見たい気持ちを抑え、頭を切り替え、入り口付近を見渡した。


「あそこじゃない? 」


咲夜が受付を見つけ歩き出した。
ここは郷土品が多いのか、展示物の種類が多い。


受付には女性が1人。
カウンターに資料館のパンフレットが置いてあった。


「すみません。この地域の昔話や、伝承に詳しい方っていらっしゃいますか? 私達、夏休みの課題で郷土の歴史を調べているんです。」


なるほど、その聞き方なら問題は無いだろうな。
まさか、いきなり『オニ』って知ってます? とは聞けないからな。


「そうですね。館長はここのお生まれですから詳しいんじゃないでしょうか? 今、2階で催事の準備をしていますので、上がればいると思いますよ。」


「2階ですね。ありがとうございます。」


僕達は、受付の女性にお礼を言って、2階へ向かった。