「だって、ピンっと張り詰めた空気を身に纏ってるのに、栄子さんには朗らかに笑うんです。びっくりしました。優しく笑う巧さんが、こんな大会社の御曹司だったなんて」
「……」
栄子おばあさまのお見舞いの時に初めて会ったってこと?
最初から巧の地位を知らずに、見た目や性格だけで一目ぼれしたって私に牽制したいの?
「……志野」
さっきまで、どんな顔をして会えばいいのか分からなかった相手。
そう思っていたのに、今は少し違う。
やっと私は今、巧に自分の気持ちを伝えてゆっくり歩き出そうとしている。
その横を、猪突猛進で現れた森元さんが邪魔で邪魔で仕方ないのだ。
こんなにもストレートに自分の気持ちを表現しているのもだ。
恋愛面においては、私よりも素直でプライドも無いこの子の方が有利なのかもしれない。
「さっさと戻ってきて。オーストラリアとの取引は、代理人の巧がいなきゃダメでしょ」
「……そうだな。森元の仕事の指示は庶務課に頼むか。森元、その書類だがコピー終わったら」
事務的な会話をしてから、視線が森元さんへと移る。
すると、隠しきれない気持ちがまっすぐな表情や視線で巧に訴えかけていた。
そんなに好き好きとオーラをよく送れるものだ。
しかも彼女の中では、私と巧は恋人のはずなのに、人様の彼氏だとは思ってるのか。
思っていても溢れてくるのだろうか。



