悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?


テーブルに置いていた携帯が振動して揺れ出す。
端っこに落ちてしまう前に仕方なく手に取ると、相手は副社長だった。

「……お疲れ様です」
『志野ちゃん? ごめんねー。寸前で息子に逃げられちゃってさ、そっち行くかもしれないわー。俺に何か言われると分かったから逃げたのかな、あいつは』
畳みかけるように副社長が言いわけを言ってくるので、苦笑いさえも浮かばない。
いつもだったら、何かぴしゃりと言ってやるのに、そんな言葉も浮かばなかった。

「いえ。問題ないです。これは私と巧の問題なので」

相変わらず可愛くない。
こんな私のどこが巧は好きなんだろう。
『そうか。すまんな。孫を楽しみにしてるから』
「用がそれだけなら切ります」

電話を切ると、自然と大きな溜息が出た。
そこで、フライパンの中のバターが焦げてしまっているのに気づいてシンクに持って行き、水に沈めた。ご飯なんて食べたくもない。

「……」

私は巧のどこが好きなんだろうか。
それをはっきり相手に伝えないといけない。
はっきり、何が、どう、どのくらい?
伝わらないと、巧を傷つけてしまう。
本当に巧しかいないと思ってた。だから安心してたのは本当だ。
ここまで巧を傷つけたのは、きっと私のせい。
自分を磨くことしか考えてなかったせい。
巧だって私と同じで、色々と考えているのに。