「お前には、俺さえいればいいだろ?」

「巧?」

「お前は男を知らなさすぎるんだ。個室で二人っきりで何か起きてからじゃ遅いんだからな」

――男を知らなさすぎる。
一番痛いところをまた抉られた。
なんでキースも巧も、恋愛経験がないことを攻めてくるの。

「知らないのは私が悪いの……?」

呆然としていた私の唇が小さく動くと、弱弱しく零れ落ちた。


「俺さえいればいいって、どういう意味?」

この問いの仕方であってるのか、私には分からない。
なんでキースの事を良くも知らないで巧が怒るのかも分からない。

でも、巧の事を知りたかったのに、そんな雰囲気にしたことがなかったのは私だけが悪いのだろうか。

台所に私の両手を強く押し付けると、鼻と鼻が掠れた。

顔が触れあうまで巧が近づいてきている。
私とやっと向き合ってくれてる?
視線を交わし、息が当たり、胸が大きく鳴っているのが聞こえそうな距離。

「お前こそ、俺の事をどう思ってるんだ」