「老人ホームに実習に来ていた学生とかなんとか言ってたような」

「ふうん」

あの高級老人ホームへ実習に来るということはそれなりの大学だろうし、おばあさまが気に入る人なんてそうそう居ない。俄然興味が沸いてきた。

「って。頭いてえ」
「昨日、何件連れ回されたの?」

よろよろ起きてきた巧は、一階へ降りると慣れた手つきでコップを取り出し水を飲みだす。

「覚えてない。が、あんのクゾジジイ、自分の分まで俺に回して飲まそうとするから足踏みつけてやったからな」

「勇ましいことで」

普段穏やかに対処している巧が、珍しく毒を吐いていて笑ってしまった。
最近は仕事の交友関係を学ぶために、色んな場所へ連れ回されているようだった。

流石にお酒の強い巧も堪えているようで、会社近くのマンションに帰るよりも父を送って此処で眠ってしまう回数の方が増えてきている。


「でも毎回同じ布団に巧がいると狭いよね。もうあんたの部屋、作っちゃえば?」

「別に俺はお前のベッドでいいんだけど」