『妹かお母さんなら家に居るでしょ?』

いつも通り、平常心でメールを打つ。
キースのせいで、メールさえいちいち何か意識してしまう自分が嫌だ。

『ああ。だからもう家に入ってる。迎えに行こうか?』

『タクシーだから大丈夫。もう着くし』

そう送ってから返事も待たずに鞄に投げ込む。
胸が痛い。苦しい。
そんな感情が自分から沸き上がってくるのが信じられないし、なんだがとてつもなく苦しかった。

キースと比べたらダメだとは分かってる。
でも、巧はどうなんだろう。
少しでも恋愛経験者な素振りを見せられたら、私は少しショックかもしれない。
私は、婚約者の肩書きに囚われて、他の男に全く興味が沸かなかったから。

逆に、巧はどうなのかな。

あんなに常日頃から色んな女子社員に羨望の眼差しで見つめられてるのに、たじろぐことはない。

もしかして恋愛経験者?
だとしたどこまで?

不安で思考が上手く纏まらないまま、タクシーは玄関で座り込む巧がいる、私の家へ到着したのだった。