『何か食べたいものある?』
定時きっかりに仕事を終え、メールをした。
『お疲れ様。もう予約してるよ』
何故、日本に来日しているはずのキースが店を予約してるの。びっくりした。
こんなさり気無いけどリードしてくれる人ってちょっと新鮮だ。
巧は完璧だけど、朝は弱いから私が何でもしてあげてるし。
駅に到着し、キースに連絡しようとしたら、誰かが手を振るのが見えた。
「シノ!」
「き、キース!」
イケメンな外国人で長身なキースが大きく手を振れば、道行く人たちの視線が私に集まってくる。
恥ずかしかったけれど、視線が自分の注がれるのは慣れている。
キースの隣に居て恥ずかしい自分は、何一つない。
脳裏に浮かぶ、おどおどしながらも顔を真っ赤にしつつ巧の後を着いていく森元さんとは違うんだ。
「君が私を探すのをこっそり見ようと思ったけど、ダメだった。タクシーから降りた瞬間、どうしても名前を呼ばすにはいられなかったんだ」
「ぷ。何それ。本当、キースって面白いし私の予想の更に上をいくよね」
尊敬の意味を込めてそう笑うと、目を細めて嬉しそうな顔になる。
「良かった。子どもっぽいと言われるかと思ったんだ。この先に同級生がダーツバーを経営しているんで予約したけど、良いかな?」
「ダーツ! できるかな。キースは得意なの?」
歩きながら何気なくそう言うと、唇の端を上げてにやりとする。
「得意じゃなければ誘いませんよ」



