「副社長、何も企んでいませんよね?」
「とんでもない」
にっこりと副社長はタヌキに変身した。
間髪入れずに答える辺り益々怪しい。
「私にキース、巧にあの足手まといちゃんを宛がうつもり?」
「ははは。面白い」
私の予想を笑い飛ばした。
そして、エレベーターの方に数歩歩いてから、わざとらしく空を見上げる。
「ところで志野さん」
「話を逸らさないで」
「私たちは二人に孫を望めるのかな?」
「……は?」
仕事モードに切り替わっていた私は、その内容に脱力する。
なんで今、その話をするの?
「いい加減、二人が何も進展ないのだから、私の方から息子に打診してもいいのかね?」
「巧に?」
結婚はまだかと圧力をかける?
それで巧がその圧力に屈すような男ではないと思う。
「……どうそ」
私の素っ気ない言葉に、副社長の顔を面食らったような、鳩が豆をぶつけられたような間抜けな顔になる。
誰かに言われて重い腰を上げられても嬉しくない。
だったら自分で聞かないといけないのに、なんて聞いていいのか分からない。
「じゃあ、今夜は息子を借りるからな」



