その瞬間、黄色い声が上がった。
「ちょっと! うるさいってば」
「だって! 外国人にそんな甘い言葉、私達も言われたいっ」
「仕事に戻りなさい!」
「またね。お仕事がんばってね」
ひらひらと手を振るキースに、女子社員は簡単に蕩けてしまった。
「ごめんね。なんか、日本人ってすぐ外国の王子様みたいなイケメン見たらあんな馬鹿みたいな」
「王子、ねえ」
クスクスとキースが笑う。
「俺は君の王子みたいに映ってるんだね」
「え」
「では、差し詰め向こうはナイト? ナイトじゃ君には相応しくないかな」
何故だが上機嫌のキースはちらりと窓の外を見上げた後、涼しい顔でエレベーターに乗り込んだ。
私は、恥さらしの女子社員たちを睨みつけながらその後に続く。
キースは優しいから、私を立てて口説くなんて言ってくれたけど、あの場面で隣が巧だったらなんて言ってくれただろう。
キースみたいに優しくもない。
甘い言葉もくれない。
恋人ではない。
でも口約束の婚約に縛られている。
もしかして、私達の関係はそんなに拘束力は無くて、キースの言うとおり、どちらかに運命の相手が現れたら解放されてしまう関係なんだろうか。



